「陽鞠! 大丈夫か?! 勝手に入らないでください! 警察呼びますよ!」
 狼狽している陽鞠に代わり、庄吾が堂々した態度で女性に退去を促す。

 赤のタイトワンピースに夜会巻き。手には小ぶりの黒のブランド鞄に高いヒールの女性。まるで水商売の人のようだった。


「えぇー、ちょーひどくなぁい? しょーごくん。初めましてぇ。わたしぃ、稲本陽鞠のママの呉松結花でぇーす! ゆいちゃんって呼んでねっ!」
 庄吾は結花のぶりっ子口調とこの呼び方に面食らって言葉がでなかった。

 なんだ、この耳を塞ぎたくなるようなしゃべり方と声。

「なにー? 久しぶりの再会なのに、ひーちゃんもゆうちゃんも冷たいねぇ」
 結花は庄吾を無視し、リビングに向かった。
 鞄からスマホを取り出し写真撮影を始めた。

 ふーん、なかなかきれいなお家じゃない。
 ちり全然落ちてないし、ソファーもダイニングテーブルも高そうね。
 あの子神経質できれい好きなとこあったからね。
 ほんとつまんない女。

 キッチンはっと、うーんアイランドタイプで広いわね。
 あ、最新の全自動調理器あるじゃん! これほしいんだよねぇ。
 冷蔵庫の中もチェックして、今度は夫婦の部屋や子供達の部屋、そして陽鞠の仕事部屋に勝手に入る。