『性別は女性、年齢は30代前半、本名は――』

 名前や出身大学、そして悠真が企業の役員であること、結花について、子供達の名前と通っている学校が暴露された。

「もうやめて!」

 陽鞠は顔を覆って庄吾の腕を強く握った。
 なんで? 私のことバレてるの?
 誰? こんなこと広めたの。
 こんな見ず知らずのキャラクターに、私達のプライベートをペラペラ話されるほど不愉快さなんてない。
 夫婦でSNSや日常生活での振る舞いを気をつけていたのに。
 今まで、夫が週刊誌のネタのターゲットにされたことなかったのに。
 これで広まって拡散されたら、マスコミが押しかけてくるかもしれない。いや、その前にあの人がやってくるかもしれない。

 ノワの動画には家がどの辺りも出ている。
 
「――もしかしたら、他の共演者や仕事関係者のSNSかな?」
 悠真の発言に陽鞠と庄吾ははっとした。
「他の人のSNSに写ってた時の投稿……」
「あー、あれか、いわゆる"特定班"とか言う人ね……」
 陽鞠は額に手を当てため息をついた。

 世の中にはネット上の投稿をもとに、人様のプライベートや個人情報を調べ上げるのを趣味にしている人間がいるらしい。
 中にはそれを裏の仕事として、商売でやっている人もいる。