だから人がいない所に依田(よだ)家でヘルプに回っている。
 今日は朝から子どもが熱出たので休んだパートの代わりに現場出ている。明日は隣町のお店のヘルプだ。
 これから年末年始商戦が始まる。
 年末に食材を一気に買うお客さんが増えるので、必然的に忙しくなる。この時期はてんてこまいになるし、帰りも日付け変わるギリギリになる。

 ――まさか、俺浮気疑われてる?!

 嫌な結末が頭によぎる。
 お小遣いがまた減るのだろうか。
 私を疑わせるような行動をしたからバツとして減らすと。
 結婚1ヶ月目でそれをやられた。ゴミ捨てが出来てなかったからと。
 それとも、呉松家が経営している会社で働けと言われるのか。
 自分の仕事に誇りを持っているから断った。
 こっちも自分の家業が大事だ。しかも子どもの頃から慣れ親しんでいるんだ。スタッフの皆もお客様も好きだ。
 妻の実家――特に妻の母がこれにかなり怒った。
 だっさい仕事してるあなたに世界一可愛い娘を嫁にやるのだから、これぐらいやりなさいと。
 悔しかった。目の前で家族を否定されたような気分だった。しかも妻は同調していた。笑いながら。
 それが嫌なら、誓約書に署名したら許してやると。
 当時は結婚できるならと思っていた。