近所では遊び上手のお兄さん、優しい人と評判だった。
 ひかるも、近所のスーパーで少し話したことある程度に面識があった。
 犯人逮捕の緊急速報で、テロップに名前出た瞬間、夫と一緒に「嘘でしょ」と声を出した。
 以来、子供達には知っている人でも大人がいないときは関わらないように、警察に逃げるなど口酸っぱく言っている。
 
 休憩がてらリビングに向かう。
 ダイニングテーブルには、白髪交じりで穏やかな笑みを浮かべる男性がいた。父の悠真(ゆうま)だ。
「陽鞠、庄吾くんが淹れてくれたコーヒー飲もう。仕事で疲れただろ? ほら、用意してるから。庄吾(しょうご)くんのは美味しいからねぇ」
 悠真は向かいの席を指差した。
 キッチンから「恥ずかしいですよー」と声がした。
 細身で170ぐらいあるだろうか、爽やかなスポーツ刈りに大きな目と少し幼く見える顔。
 ひかるの夫の稲本(いなもと)庄吾だ。

 庄吾は座りなよとひかるに着席を促され、うんと座った。
 コーヒーの匂いがひかるの鼻孔を刺激する。
 ひかるは「あーいい匂い」と誘われ、ダイニングテーブルに座った。
 隣には庄吾がいる。なんでか分からないけど、心躍るというか安心感がある。

 まさか自分が結婚して、子供2人なんて思ってもなかった。