世間はお盆シーズンだが、長谷川ひかるは仕事で忙しかった。
 プライベート用のスマホのディスプレイには、通知の山だ。
 いつも行ってるスーパーや保護者仲間の連絡、そして最寄りの警察署。

 警察署から、連日不審者情報が来てげんなりする。
 ほぼ毎日といっていいぐらいだ。
 不審者はもちろん、盗撮、痴漢、高齢者を狙った詐欺や行方不明者など、枚挙に暇がない。
 この4月から双子の琥珀(こはく)翡翠(ひすい)が小学生になったので、余計神経質になる。

 2年前にこの近辺で殺害事件があった。
 7月から9月の間に、小学生から高校生、それぞれが通う学校の校門の前で、遺体として遺棄されていた。

 犯人は被害者家族に100万の要求をし、被害者が性的被害に遭っている様子を送りつけた。
 犯行時間は18時台、家族への送信は22時だった。 
 警察は家族へ送っていることから、面識のある人間ではないかと考えていた。
 しらみつぶしに聞き込みや情報提供した結果、20代の男性が逮捕された。
 彼は被害者達と面識があった。よく遊んで貰ってた近所のお兄さんポジションのような関係。
 彼は「秘密基地」で遊ぼうと被害者達を山奥に連れ出し、犯行に及んだ。
 その秘密基地は、被害者達は何度も行ったことのある場所だった。