夕芽華は「ウィスキーのお湯割りお願いします」と、ボーイにコールした。
「資格かぁ、大変だなぁ。俺も昔簿記だフィナンシャルだ勉強したから、よーく分かる。嫁さんに無理しすぎって叱られたよ」
 神田の苦労話に咲羽と夕芽華は耳を傾ける。
 さりげなく咲羽は神田の腰を触った。

 美音が出勤できなかったのは、資格云々ではなく、精神的に追い詰められているから。
 プライベートなことを聞かれた時に答える、方便のようなものだ。

 あやめママは、美音が休む度に気遣う連絡をしているし、彼女が勤務している最中の様子が変だと真っ先に気づいた。
 普段しないミスや勤務終了後の顔つきをみていたら、ほっとけなかったからである。
 1ヶ月前、しばらく休むか出勤回数減らしたらどうかと提案したが、彼女は頑張りますと続けた。
 
『こうでもしないと稼げないから。ほんとは、もう少し増やしたいぐらいです』

 あやめママはこれ以上増やさない方がいいと止めた。
 美音は入った3年前から、週4で来ている。それで段々人気が出たものだから、長時間拘束されるため、体力的に負担かかっていた。

「体が資本だからね。ああいう頑張ってる子応援したくなるんだな」
「えー、私はどうなんですか?」