カナリアのオーナーである水嶋あやめが「でしょう」と得意げな笑みを浮かべて室井をはさむように隣に座った。
 あやめママは帯は紺色で、白色の刺繍だろうか、雲と竜の絵が描かれている着物。
 丸っこい顔と大きな目はお客達の目を惹きつかせる。
 カナリアの店内は、それぞれの席にいるホステス達がお客様2人以上で囲むように座っていた。
 時折談笑する声が響く。
「今日はお仕事の帰りですか?」
 咲羽の質問に室井は「そうだよー。疲れちゃった。家に帰ったら、孫とゲームするんだ」
 室井は近々企業の役員からトップになる予定で、今はその根回しや手続きで疲れ気味だった。
 息抜きは、カナリアのホステス達と談笑することと、孫達とゲームすることだった。
「お孫さんとゲームですか? すごーい!」
「夏休み遊びに来たときさ、孫たちとやったんだよ。そしたら、ものの見事にまけちゃってねぇ」

 室井が孫達と遊んだゲームはアクション物である。
 20年以上前に発売が始まり、そこから数年おきにシリーズとして出されている。
 今となっては、子供の頃遊んでいた人達が親になり、親子で楽しんでいるお家も少なくない。 
 半年前に最新作が発売され、室井はすぐに購入し、孫達といつ勝負できていいように、特訓していたが、結局負けたので悔しがっている。