悪い意味で有名になってしまったし、働き口なんてないと思う。そもそも働きたくないから結婚したんだし。
 でも現実を受け入れないと。ここは無理してでも言うこと聞かないと。

 結花は「分かりました」と浅沼の顔色を伺うように、弱気で答えた。
 浅沼は満足げに頭を上下した。
 それから、結花は浅沼に毎日あれこれ言いつけられては、あれが出来てない、書類の日本語がおかしいだ、にらみ付けてるような態度で気に入らないと、難癖をつけられる日々を送っていた。
 浅沼から嫌味を言われるが、丸岡は出来たら出耒たら褒めていた。
 浅沼が結花を褒めていたのは丸岡がいる手前であり、2人きりになれば、中学時代の仕返しと言わんばかりに嫌味や難癖をつけられ、結花は精神的に疲弊しだしていた。
 
 顔色も悪く、寮に帰っても話相手が全然いないので、はけ口がなかった。
 しかも浅沼に言われたことを思い出して、泣きそうになったり、寝れない日々が続く。
 精神科のお世話になりはじめていた。
 あれこれ薬を処方され、業務の合間を縫っては、服用してやり続けていた。
 
 結花が借金を返し終わったのは、50代半ばだった。

 返済後浅沼から体よく退職を言われ、住む所が浅沼工場からほど近い安アパートになった。