母は『ゆいちゃんは可愛いから嫉妬でいじめられちゃうからダメ』と。
 別に芸能界だけでなかったけど。
 仕事せず、誰かに養われて、傅かれるような生活が合ってるといつも言っていた。

 いつしか、他人に親切したり、努力するのも嫌になった。兄と姉を引き合いにされるのも嫌になった。
 誰も見てくれないから。
 それなら見た目を武器にして、注目された方がマシだと思うようになった。

「ある意味、呉松さんも"被害者"かもね。元凶はお母さん。いつもお姫様扱いさせてたのって、呉松さんが自立されるのが嫌だったんじゃない? しっかりされるのが嫌みたいな。”お母さんがいないと、何もできないお姫様"でいてほしい的な? 呉松さんは無意識に”お母さんの呪縛”にとらわれてる」
「母の呪縛、ですか?」
 丸岡の話にオウム返しする。
「そう。お母さんに支配されてたって言えばいいのかな」
「……確かに少し分かります。母が当主だったので。誰も逆らえない雰囲気ありました」

 学校で問題起こして父に怒られて納得してたら、母は『ゆいちゃんが可哀想。被害者よ』と横から入って、父と母で言い合いになった。