その同級生は浅沼の幼なじみで、小学校から大きな音、強い匂い、予定の見えないスケジュールや変更が出ると、パニックになって暴れることがあった。
 よく思わない保護者や同級生もいたが、年が上がるにつれ、家族で試行錯誤していくうちに、落ち着きを見せた。
 結花はパニックになっている姿が本当かどうか試すために、わざと匂いつきのペンを嗅がせたり、音に反応しないために、つけているヘッドホンを教室の掃除用具入れに隠してた。
 同級生は案の定パニックになり、結花はわざと殴られ”被害者”として騒いでいた。
 同級生があまり自分の状況を上手に伝えられないことを逆手に取って、結花はその家に治療費を請求した。
 しかし、結花の日頃の様子を知っている他の同級生達が証言したことから、支払いは不要になった。

 あの人はね――呉松結花はね、いつも自分が主役、”被害者”じゃないと嫌なんだよ。
 なまじ見た目だけはいいから、いくら彼女が悪いことしても、家の名前や妄信的な人間の圧力でなかったことにしてきた。
 お金払ってはい解決みたいな。
 私の杖が壊れた時もそうだったけど。
 彼女は本当に「頭を下げたことがない」「謝ったことがない」「自分で何か成し遂げたことがない」のだと思う。