『呉松さん、掃除さぼってるんだよ。丸岡さんと服部さんのいないときに。廊下の掃除はやるけど、トイレ掃除は絶対やらないから。汚れ仕事はしなくって、最後だけ少しやってやった気になってるんだ。僕や有里波ちゃんや桃花(とうか)ちゃんとか恭弥くんに押しつけてくるんだ。ちゃんとやって欲しいこと言ったら、ホースで水ぶっかけてきて、制服ぬれたんだ』
『僕の悪口はいい。そういうの慣れっこだから。でも、他の子を言われると嫌になる』
 障害者のスタッフ達は、みんな呉松さんに嫌がらせされても「慣れっこだから」と無理矢理納得させている。
 まるで言われるのもやられるのも、自分が至らないから仕方ないと言わんばかりに。
『正直、呉松さんにムカついてるんだ。今度言われたらやり返そうかといっつも考えちゃう』
 いつもニコニコして穏やかな郡山くんが、怒気をはらんだ口調でこぼしたので、よっぽどだと思った。
 上司が丸岡さんと服部さんに伝えたはずだが、一体どうなってるんだろう。

「えー、そんなこと言わないで教えてよー」
 結花は野澤の肩を揺する。
「それより、落合さんや郡山くんは元気? 最近様子が変だからさ……」
「さぁ? いつも通りじゃない? なんで?」