『落合さんがいると士気が下がるから、出ないか口パクだけして』
『1位にならなかったらどうなるか分かってるよね?』
 と、遠回しの脅し。

 事実だから逆らえなかったし、黙っていうこと聞くしかなかった。
 
 反省会と称した”魔女裁判”。
 指揮者と伴奏者、その取り巻きのヒステリックな声。
 パニックになって泣いたら、冷たい視線と露骨なため息。 
 口パクだけで出て、負けたら負けたで全て私のせい。

 ――落合さんはクラスに「いさせてやってる」んだから、迷惑かけないで。出しゃばらないで。

 ――役に立たないね。責任取って。

 何やっても、足引っ張らないように小さくなっても、苦手なりに工夫してやっても、ずるしてるとか、それはダメで片付けられる。
 
 あの指揮者と伴奏者の子が呉松さんに似ている。
 言い方もバカにした口調も。
 私が大きな声や音が苦手なのを分かってて、耳元で話してくる。
 体が弱いことや体力がないことを分かってて、わざときつい仕事をさせている。
 
 今言い返したいけど、なんて言えばいいのか分からない。

 落合が崩れている中、結花は「わー泣き崩れてる。ぶっさいく。早く立てよ」と追い詰める。
 ゆっくり立ち上がろうとした瞬間、結花は落合の足を踏んづけて、転ばせた。