「とっとと顔洗って仕事戻ってくんない? その姿見苦しいから。いい年してそんなんでよく生きてこれたね。身内や友達でいてほしくない人ぶっちぎり1位だ」

 女性社員が煽ると「マジそれな」とほかのスタッフ達も同調する。

「ひどいよー。ゆいちゃんは世界一可愛いもん! なんでみんな冷たいの?」 
「てか、なんで優しくしないといけないの? 逆に聞きたいんだけど。仕事真面目に覚えないわ、結果ろくに出してないわ、注意されたら被害者ムーブの人間に、無条件で優しくされると思ってるのって、烏滸がましい。みんなの足引っ張るだけの役立たずの存在。少年漫画に出てくる足でまといヒロインみたい。ネットで叩かれるタイプの。あ、現に叩かれてたんだっけ?」

「お、服部節がでたぞ」と男性社員達が煽る。
 30代半ばだろうか、長い髪でぐらいの一つくくりにした、細身の背の高い女性社員――服部つかさは、チャレンジ枠のリーダー格で結花の指導の担当の1人だ。結花に対して一番辛く当たる。

 ――他人を不愉快にさせる天才。

 服部は日頃から結花に対して目の敵にしている。そもそも彼女のようなタイプが嫌いだから、余計だった。
 彼女にとって結花は、仕事は真面目にやんないわ、自分の立場を全く分かってない、目障りな存在だった。