男の人に断られるなんて! こんな屈辱ある?

「とにかく、お母様のやってることは、いずれ大きな事故につながります。いや、いつなってもおかしくありません。どうか今後のことを考えて頂けませんか?」 
 遠回しに退所を考えるような物言いだった。
「そんな! お母さんは施設の人気者なんでしょ! いなくなったら困るのはそっちでしょ!」
「そうよ! お母さんは悪くないの。悪者にしたということで、私の心はズタズタよ。そちらが頭さげてくれたら考えますけど」
 大磐は「はぁ?」と思わず声をだした。

 もう無理だ。この母娘は。全然話が通じない。
 確かに私達の管理不足もある。それは責められても仕方ないと思う。
 いくら差し入れのお菓子を施設管理にしても、利用者の家族の情報や業務情報を厳しく管理しても、弱みをついて、思い通りにさせられる。
 自分の力量不足なのか。
 これ以上限界だ。
 
「大磐さん、この2人の戯れ言は聞かなくて結構です。本当に申し訳ございません」
 良輔は立ち上がって「これ以上、スタッフの皆さんの労力や、事故や被害者が出ないように、手を打ちます。被害にあったご家族には、母を訴えても構わないとお伝えください」と淡々と告げた。
「はぁ?! 訴えるってなによ! お母さん困らせる気?!」