「星野さんと足立さんって、付き合ってるでしょ⁈ でも最近ちょーっと、距離があるのよねぇ。だから、取り持つために、お互いの悪口言っちゃった。婚約間近だったでしょ? 2人とも、指輪同じのつけてたから-。残念ねぇ……まぁ、お若いし、他にもっといい人いるか……」
 
 その瞬間「いい加減辞めて貰えますか」と低い声。大磐だった。

 面談室に緊張感が走る。
 大磐の目は据わっていた。
「うちの施設のルールを守らない上に、注意されたらスタッフの悪口ですか? 挙げ句の果てに、スタッフのプライベートにとやかく言って、どういうおつもりですか? かき回したいんですか?」
「かき回すって……、冗談がお上手ねぇ。みんなと仲良くしたいからコミュニケーション取ってるだけじゃない? たかがそれぐらいのことでピリピリしてるなんて、利用者達も職員達も真面目ねぇ。面白くないわ。ね、ゆいちゃん?」 
 話をふられた結花は「お母さんのコミュニケーションに目くじら立てるとか、頭固すぎる」と同調する。
「そうよー。だいたい、利用者さん達もさー、うちのお母さんから、お菓子もらえるだけでありがたく思わなきゃ。天下の呉松家よ? アレルギーなんて嘘でしょ? 演技じゃないの? こんなのでいちいち大げさねぇ」