期限内に施設や介護関係の支払いが滞る利用者も少なくない中、良輔はきちんと行う。
 施設スタッフ達への気遣いも忘れないよう、毎回「皆さんで休憩時に召し上がってください」と差し入れを欠かさない。
 余談だが、女性スタッフの間では、良輔の見た目がいいことから、密かなファンもいる。
 一方で周子が使う日常のものは、本人の意向を無視して、一番安い物やしょぼいものを買ってきている。
 頻繁に買いにいかなくて済むように、毎回大量購入している。
 良輔としては「買ってもらえるだけでありがたく思え」である。
 かつて良輔と静華にやってたことが返ってきてるのだから。

 他の利用者達の部屋には、孫や家族の写真や手紙が壁のあちこちに飾ってある中、周子の部屋は孫達の写真が少ない。申し訳程度に良輔と結花の家の写真だけ。
 残りは結花だけか母娘と一緒に写ってるものばかり。
 静華とは音信不通で、良輔は「息子が写真苦手だから」と言って一切渡さない。

 そもそも静華にいたっては結婚したことも、その相手も、子供の有無も知らない。
 結花は静華が結婚しないことや彼氏がいないことを散々馬鹿にしてきた。
 いても狙われるので一切言わないことにしていた。
 結花の脳内では「いつまで経っても彼氏がいない地味な女」である。