休み時にこたつで寝ようものなら、元妻の結花に働けだ、出かけようだ、せっつかれていた。
 そのため、医者から療養するように何度も言われていたが、結局無理がたたって、5年前に勤務中に倒れてしまった。
 それ以来仕事をセーブするように心がけている。
 娘の陽鞠(ひまり)は今年から大学生になり、遠方の有名大学に通い始めた。
 実家に帰るのもお盆の時期3日だけで、すぐに大学の寮に戻った。

 悠真の両親である弘之(ひろゆき)澄江(すみえ)は、陽鞠が独立したのを機に、西南中央(せいなんちゅうおう)の近くにある有料老人ホームで悠々自適に過ごしている。
 ホームまで月1で面会に行ったり、陽鞠と一緒にビデオ電話でやりとりをしている。
 弘之と澄江は職員と利用者の人気者である。
 お茶目なことからだ。
 特にローカルスーパーよだの話は弘之と澄江の鉄板ネタのようなものだ。
 施設に配達される新聞の折り込みチラシに入っているので、他の利用者達と何が安いだ、おいしいだと話題になる。
 利用者達の中には本人または家族が使っているので話が盛り上がる。
 弘之と澄江は利用者達とのコミュニケーションで、よく見ていることから、異変を職員達にすぐ話して、事故やトラブルが最小限で抑えられたことが何回もあった。