「いい加減にして! ゆいちゃんが、家族に追い出されたのはそういとこでしょ! 人を人と思わないとことか、大事にしないとことか、自分本位なとこだよ!」
 夫を侮辱された望海は普段より倍以上のきつい言い方になる。
 顔は赤くなり、呼吸が荒くなる。
「分家の子の癖に! 本家のお嬢様に逆らう気?」
「家の立場は関係ないでしょ! 今の状況を本気で分かってるの?! 家追い出されてお願いする立場なのに、いきなりお家見せてとか、人の夫借りたいとか言って、はいどうぞってなるわけないでしょ! 普通は」
 普段言われっぱなしっでおっとりしている望海が、舌鋒(ぜっぽう)|鋭く言い返す。
《するど》

 本当は緊張している。これ以上悪口言われたり、腹いせになにか物を壊されたり、家族に危害を加えられそうで。
 最初はゆいちゃんがいじめられているから、母が周子おばさんから、同性の同い年の友達がいないからと遊び相手として呼ばれた。  
 何かされても、言われてもずっと我慢していた。
 中学からは"お世話係化”していた。

 付き合いをやめたいと何度も言っても、周子(ちかこ)おばさんが「結花ちゃんと付き合わなければ、お金の支援やめる。両親が経営している会社を買い取る」と両親に脅していた。