「おー! すごーい高い天井!」
開放感あふれる天井に、人工の大理石の玄関に生活感が一切でないような黒の下駄箱と全身ミラー。
玄関のすぐそばには、白を基調とした階段や2階の廊下が見える。
「あ、こっから先行かないでね。家族がいるから」
あくまでも玄関までということだ。
「なんでよー! 中入らせて! ね、ここ何LDK? お茶!」
「さっきの話聞いてた? うちの家族があなたのこと苦手って」
望海は結花の意図を察することなく、うんざりそうに眉をしかめる。
家の中なんて見せた日なんて、最悪な展開しかない。
キッチンやリビングはじめ、夫婦、子供達の部屋やお風呂とか見たがる。
それぞれケチつけるのが目に見えてる。
壁紙がダサいとか、部屋が小さいとか。実家の方が綺麗と。
そりゃあの春の台で一際目立つ日本家屋の家とは違うんだから。
子供達も何年も会ってないし、親族との付き合いが面倒に感じる年頃。
夫も結婚式でゆいちゃんに失礼なこと言われたり、友達にちょっかいかけてるとこ見て、いい感情を持ってない。
しかも「お茶!」と偉そうに! 私は召使いじゃない!
粗相したらどうせお茶引っかけるんでしょ?
以前ゆいちゃんの実家にお手伝いさん3人がいたおばちゃん達を思い出す。