ただでさえ、彼女は自分の姉の恋人や同級生や婚約者いる先生の彼氏を寝取った前科がある。
 しかも同級生の件は、後に彼女の娘の担任だ。あの子が母親のことで散々言われたり、理不尽な扱いをされている。
 当のやらかした本人は現在進行形でのうのうと生きている。
 前回の離婚の件で学習していないことを確信した。
 そうじゃなきゃ、人のお金くすねたり、家のことおろそかにしたりしないから。
 彼女は自分が楽して手に入れるか、他人の手柄を自分のものにすることしか考えていない。人を踏み台にして威張り腐ることしかできない。
 数年ぶりに会っても、相変わらず自分のことは名前で呼んでるし、自分が常に被害者や悲劇のヒロインや主役でいないと気が済まない所が、言動や態度に出ている。
 苦労するのが絶対いいとは言えないけれど、彼女はおいしいとこ取りして、マズイ物は他人に押しつける。
 根っこは変わってないので、ある意味安心した。

「何言ってるの? 呉松家本家のお嬢様に家譲れって話よ? いいよ、お母さんにあんたの家、力づくで取って貰うから!」
 望海は思わず吹き出して笑った。