祖父母も外では「結花さん」と呼んでるが、家では「呉松さん」と名前で呼ばない。父も絶対名前ではなく「あいつ」や「お前」とか「あれ」「それ」と呼ばれている。
 こいつには家族扱いしないことが一番いい仕返しだ。俺たちや瀬ノ上さんを騙した罰だ。
 元夫も娘もこいつが痛い目に遭った方が留飲が下がるだろう。 
 祖父の話聞いてたら、あいつが俺たちのお金をぶんどって遊んでる可能性は十分あり得る。
 日頃の好感度低いから疑われるんだよ。自業自得だ。

「――やっぱり、あった。光河、葵依。やっぱりお前達の口座から引き落とされている。昼間にな。通帳記載しないのも、お前達にバレないようにするため。浅知恵だな。もっというと、おじいちゃんおばあちゃんもだ」
 周平は低い声で結花に鋭利な視線を向けた。
 子供達は悪臭を振り払うかのように、鼻をつまんだ。
 結花の隠し口座――実家にいたときに使っていただハーバー銀行のものだ。
 結花と周平が再婚した2年前から、不定期だがだいたい午前中に、家族のお金が数百円から多いときは万単位で引き落とされ、結花の口座のもとに来ている。