「おい、どういうことだ? お前が来てからって? スマホ見せろ! 光河、葵依、お前達はあいつの私物で売れそうな物片っ端から持ってこい!」
 子供達はそそくさと2階の夫婦の部屋に向かった。
「ま、待って! ゆいちゃんのよ!」
 子供達を追いかけようとした瞬間、結花は周平にに腕を掴まれた。力が抜けて座り込んでしまった。
「お前はここで俺とお話じっくりしよう」
 振り向くと周平の目が据わっていた。
「な、なによ? ゆいちゃんの好きな格好よ! 何が悪いの?!」
 上目使いで見逃してと視線を送るが周平は「なんだその目は」と顔を指で小突いた。
「お前、葵依と光河のお小遣いぶんどってるみたいだな。どういうつもりだ?」
「あ、いや……そ、その……お、お母さん銀行として"預かってる"だけ、というか……」
 
 視線を下ろして本心を悟られないように必死になる。
 本当は子供達のお金を預かって"息抜き"に遊びに行っている。どうしようバレちゃう。
 てかちょっとぐらいいいじゃん。専業主婦なんだからさ。
 ゆいちゃんは世界一可愛いからそれぐらい許してよ。

「じゃぁ、これはどういうことだ?」
 夫がスマホを見せてきた。

 紺色のスーツを着ている白髪頭で眼鏡かけた男性と私が大岳台の近くのレストランで食事している様子。