西南中央《せいなんちゅうおう》駅の改札口を越えた所にストリートピアノがあるぐらいで、足を止めて聞き入れる人がいる。 駅周辺は、酔っ払いやホームレスがいないし、よくネットで出てくる宗教勧誘や政治的なビラ配りをする人なんていない。厳しく決められているから。
 スーパーもうちが経営してるとこと、大手スーパーのチェーン店で来客を競ってる。
 みんな安いスーパーになんだかんだ行きたがるのは分かった。
 たとえ1人で住んでいても、長年住んでる場所だから近所の人やママ友に働いてる情報が回ってる。
 親友の望海から頑張って働いてるのねと連絡が来た。これで情報が広まることの恐ろしさを痛感した。
 もう私の悪行も出回ってるし、娘の現状も、夫との関係も。情報源は望海からだった。
 とにかく惨めでしんどい。私は外堀を埋められている。
 今頃望海もニヤニヤしながら、私の行く末を高見の見物してるのかもしれない。
 スマホの通知音が鳴った。
 ディスプレイを見て思わず心が高鳴る。
 最初に会ったときのような。
『結花? 元気か?』
 うん、なんとかと声がはずむ。
 何で連絡してくれないの、返してくれないのと責めようと思ったけど抑える。
『今週の土曜日空いてる?』
 待ってとスマホアプリでシフトを確認する。