共働きの同級生の親を見ては「あの家はお母さんが働いてて大変そうね」と心配するフリをしては、見下していた。
 かといって義理の親――父の両親の介護はおろか、実両親の介護すらやっていない。
 介護は全て老人ホームに丸投げでろくに面会に行っていない。
 たまに面会いったらいかに介護だ大変か語っていた。
 だから私は絶対義理の親の介護なんてやらない。
 絶対夫に押し付けて逃げてやる。

 ――私にとって大切なのは自分自身。自分が一番可愛い。自己保身含めて。

 結花はコーヒーを準備してソファーに腰掛ける。
 その瞬間「ただいまー」と脳天気な声が聞こえた。
 夫の悠真が帰ってきた。
 まだ夜の7時だ。こんな時間に帰ってくるなんて珍しいなと思いつつ、結花は悠真を出迎える。
「ただいまー!」
 結花はスーツ姿の悠真に抱きつく。
 これで他所の女の匂いがないかさり気なくチェックする。
 よし、何もない。大丈夫。
「ゆ、ゆいか、先にお風呂入りたいんだけど……」
「えーっ」
 唇を尖らせて不満アピールをする。
 今家に帰ってきたばかりなのに! お風呂なんて入れてるわけないよ!
 せっかくコーヒー飲んでゆっくりしようかという時に、こんな早く帰ってくるのよ!
「……わ、わかった。飯は?」
「今用意するから待って」