元気よく答える尾澤。しかし、赤澤はさらに話を続ける。
「こんな問題児が真面目にやってるなんて、この店もいつか潰れそうね。あ、この人のご主人がここの社長だっけ?」
「まあ、過去にいじめっ子だった人が真面目に働くなんて、あり得ないわ。不祥事待ったなしね。脱税? 盗難? 男女トラブル?」
「まるで彼女が起こすと決めつけてるみたいですね」
 赤澤の話にいらだってきた尾澤はこめかみを掻く。
「そりゃそうよ? 私はこいつの《《被害者》》なんだから。娘見るとこいつの顔がちらついて仕方ない。それに性格なんてもう変わらないんだから、どっかでこのお店もこいつの身勝手さに振り回されるだけよ? 忠告よ」
 赤澤の勝ち誇った笑みは、尾澤の怒りを買った。
「あなたが見てるのは彼女の過去だけ。それで何を知った気になってるんですか? 未来を決めつけてるんですか? 確かに彼女は《《痛いおばさん》》だし、色々やらかした。今それに向き合ってやり直そうとしている。あなたは彼女が不幸になって欲しいと言ってるだけ――彼女の頑張りに水を差すような真似しないでください。大人しくしてくれませんか」
「て、店長、よ、呼んで来なさいよ!」
「店長は私ですが」
 尾澤は低い声で短く返す。