負けじと尾澤も小松菜を使った料理をアピールする。
「あらー、呉松結花さーん、こんなとこで働いてるんですねぇ」
 しばらくするとを小松菜を陳列していた結花に声をかけてきた人――その瞬間、結花の顔が強ばった。視線を下ろす。
「誰? あの人?」
 尾澤に耳打ちして「娘の担任です」と教えた。
「《《呉松》》……ゴホン、依田結花さんが働いてるって聞いたもんだから、本当かどうかこの目で確かめに来たんです」
 わざと旧姓で呼ぶ赤澤《あかざわ》に結花は無視をして、作業を続ける。
「散々働いてる私をバカにしてたけど、まさか《《依田さんが働く》》とは思わなかったー。あれだけ働くの嫌がってたのにね。惨めになったもんだねぇ。何があったの? 《《因果応報》》ね。《《中学時代の罰》》が当たったのね。まあ、それで娘さんは学校でいじめられてるもんね」
 口角を上げる赤澤。その姿を楽しんでいるようだった。
 結花は作業をしつつも、赤澤からの言葉に言い返そうと頭の中で罵倒していた。
 なんなの! いつまでも昔のこと引き合いにして!
「む、娘は関係ないでしょ‼ なんなの⁈ 辛く当たって良い理由になるの?」