だから私は一切働かない。働きたくもない。
 結婚のために、夫に尽くす人間を演じてきた。
 ”家庭的で清純な女の子”になりきっていた。
 自分でいうのもあれだけど、妙に演技力ある。
 私が得するためになら、なんだって演じる。それで異性をおちょくってきた。
 可愛い私のためならなんでもやると言わんばかりに男子は色々アプローチしてきた。
 期待させて最後落とす。それで悔しがっている姿を見て優越感に浸っていた。
 それでも課題や力仕事や面倒な雑用を男子に押し付けて、私は逃げてきた。
 私は自分が楽になるためならなんだってやる。
 母も似たような考えの人だ。
 例えば私がこれから働かないといけないとか、離婚になりそうだと、真っ先に止めるだろう。
 母も働きたがらないから。
 元々お嬢ちゃん育ちの母は、呉松家に父を婿養子に入れて、ずっと専業主婦でいたし、人にやってもらうのが当たり前の考えの人。家事は私より出来る方だが、お手伝いさんがいないと不安なので、大野さん、柿本さん、野田さん達に手伝ってもらっている。ちなみに三人とも母が子どもの頃からいる人達で、それぞれ家庭がある。
 母の口癖は「女の子が働くなんて可哀そう」だ。