「乙女坂女学院《おとめざかじょがくいん》を考えてる」
 陽鞠から学校の名前を言われた瞬間、悠真の顔が青くなる。思わず額に手を当てる。
 この家から約1時間半。遠いっちゃ遠いが、何せあそこはなかなかの名門だ。うちのような問題起こした身内が入れるような場所じゃない。
「中学編入は難しいと思う。せめて高校からは無理か? 中学は西南《せいなん》にしてさ」
 おろおろしながら、悠真は説得する。
「もう地元だと、お母さんのことばっか言われるし、隣の学校も変わらないと思う。もうあの人に言ってやりたいの! 『お母さんのおかげで私はいじめられました』って。今すぐにでも呼んできて!」
 陽鞠の目は見開いていた。