部活から帰ってきた陽鞠が「お父さん、みかん食べちゃったの⁈」と声を上げた。
「あ、悪いな……陽貴おじさんと一緒に」
悠真は陽貴に視線を向ける。
「はは、食べちまったよ。ごめんな。色々話してたんだ」
陽貴が陽鞠にこたつに入りなよと促した。
「学校に頑張って行ってるんだって?」
その瞬間陽鞠の視線が下がる。
ボロボロの学校の補助カバンには、同級生からの嫌がらせの手紙が入ってる。
今日も部長の機嫌悪くって八つ当たりされたなんて言えない。
最近の八つ当たりのターゲットは専ら私だ。
ちかのお父さんと私の母が同級生で、いじめられてたって話だから、その矛先が私になっているだけ。それをみんな知ってるから、同級生や先輩が便乗している。
「そのおでこどうした?」
悠真に言われた陽鞠は、思わずどこと触る。
「鞄もボロボロじゃないか」
陽鞠は昔から物を大切にするタイプだ。
小学校から授業中に書いた友達との手紙やプリクラや写真を大切にファイルに保管している。
「いや、そ、それは……」
視線が泳ぐ陽鞠に陽貴は、何かされたでしょと穏やかな口調で尋ねる。
まるで大人の目はごまかせないという鋭い眼光。
「なにかされた⁈ どこの誰だ? また浅沼とか言う人か?」