家族に愛想尽かされ、慰謝料を支払うべく働かないといけないおばさんなんだ。
「さあ、顔あげて」
 尾澤の穏やかな口調に結花は顔をあげる。
「――いつまで《《悲劇のヒロインで》》いるんだ? 早く涙拭いて、現実に立ち向かえ。これから言葉遣いの練習するから」
 打って変わって追い打ちかける尾澤。その目は軽蔑するかのように。
 みるみる顔面蒼白になる結花。言葉を失って声が出ない。
「こ、言葉遣い? わ、わたし、できてる、よ……?」
「復習の意味で練習するんだ」
 本当は全然なってない。まずは彼女の肥大化した自尊心をへし折る必要がある。今の立場をさらに理解してもらうために。そして、スタッフ達がスムーズに仕事できるように。