提出物も同級生の男子や気の弱そうな女子にやらせて、結花は呑気に遊んでいた。試験勉強なんてしたことがない。よくて一夜漬け。赤点の常連だった。
 見抜いてる先生はもちろんいて、保護者面談で担任から指摘されてたが、結花は開き直っていた。
 お情けで成績キープしてやってきたようなもんだった。
 自信満々で答える結花に尾澤は手で額をたたく。
「……そうですか。分かりました。まずは敬語ですね。全然分かってない。確かに私も正しく使いこなしてるかと言われたら自信ないけど……これは酷い。娘さんの方が使えてるんじゃないですか? 確か吹部《すいぶ》でしょう?」
 春の台中学の吹奏楽部は強豪校であり、上下関係にかなりシビアで有名だ。プラス暗黙の了解がたくさんあって、ついていけない人は、先輩からの嫌がらせのターゲットになる。顧問も《《伝統》》を理由に止めないらしい。それでやめてしまう子が毎年いるとスタッフが言っていた。
 娘さんは先輩に厳しく敬語を叩き込まれてるのだろう。
「そうだけど、なにか?」