「どう?」
 結花は足を組んで退屈そうに採点を見守る。
 ペンを置いた尾澤は大きくため息をついた。
「……」
 彼女の娘が学年上位と聞いていたけど、おそらく本人の努力と社長の勤勉さが受け継がれたのだろう。
「どう? 全然わかんなかったー。ゆいちゃん勉強苦手なのー。娘はよく出来るんだけどね。あいつに似てガリ勉でつまんない女よ。ま、娘が優秀なら、将来玉の輿ワンチャンあるかも。で、同居してもらって、私を楽にさせてもらう」
 この状況でよくもまぁベラベラと自分が楽になる方法しか考えないんだなと、尾澤は軽蔑するかのように視線を向けた。
「娘さんが玉の輿って言ってますけど、まるで出来る前提で言ってるんですね。今の状況分かってます?」
 娘に将来見切られる可能性高いというのに、おめでたい人だ。
「まるで出来てない。漢字も時事問題もその他諸々……何をやってきたの?」
「専業主婦よ!」
 いや、あなた家のこと何もやってないんでしょと口に出そうとしてきたがやめた。
 社長や人事部長から聞いてるんだから。家庭状況も彼女の過去のことも。
「学校の試験とかどうやってやってきたの?」
「先生に媚び売ってた。男性教師なんか私の可愛さでイチコロよ」