「――ヘルプを入れる。ただし《《義妹の天敵》》となるタイプを」
「同性ですらお手上げなんですよ? これ以上なにを期待すれば」
 また彼女に強く言われて音を上げるか喧嘩するかのどっちだろう。強く言われたらいじめられたと泣き出すし、どのみち面倒な結末しか見えない。
「万希《まき》姐《ねえ》さんって覚えてるか?」
 名前を言われた瞬間、野崎の顔が青ざめる。
 いや、めっちゃ厳しい人じゃないか。社内で有名な。
 一挙一動、言葉遣いから出来てなかったら容赦なく言われる。普段あんまり言われない福島ですら「あの人と仕事すると監視されてるみたいでしんどい」と言うレベルだ。
「あ、はい。なんで最初っから彼女を入れなかったんですか?」
「あー、彼女ね、ほら春の台店で働いてたでしょ? で、去年の暮れかな、明王寺《みょうおうじ》の実家のお母さんが倒れて旦那さんと一緒に同居してるんだ。家近い方がいいって本人が言ってたのを思い出した。彼女のことで悩んでるって話したら、そっちに行きたいって。どんだけ癖あるか見てみたいと」
「万希姐さんらしい話ですね。あの人なら彼女の勤務態度が多少改善されるかもしれませんね。で、いつくるんです?」
「来週の月曜からかな。最初の週だけ3日、翌週は5日」