一同が振り向くと店長の野崎と相川がいた。
「えー? 何でもないですよーぉ。皆さんと仲良く”おしゃべり"していただけでーす。ね、春日さん、太刀川さん?」
結花は2人に目でにらみ付ける。いじめていることがばれたら大変だから。
「ち、違うんです! よ、依田さんが……」
春日と太刀川が一部始終を説明している最中に「だから何にもないから!」と話を遮る。
「あなたには今聞いてません! 黙ってください!」
野崎がぴしゃりと結花の話を切る。
「なんなのー! ゆいちゃんの話きいてよー」
地団駄踏む結花を無視して相川はにんじんが入った段ボールに気づく。
「――依田さん、これなんですか? こんなあちこちの床とか太刀川さんと春日さんの周りに落ちてますけど」
低い声で尋ねる相川に対して「さ、さぁ、知らないわよ? それより早く一緒に袋詰めしよ」と彼の腕を掴む。
結花の目は泳いでおり狼狽えていた。早くしよということで、話題から逸らせようと考えている。
「てんちょー、にんじんが1箱だめになりそうですねー」
相川は結花の手を振り払って、見てくださいと指差す。
「うん。今聞いたよ」
野崎が結花に詰め寄って「――依田さん、どういうつもりだ?」と鋭利な目で低い声で制する。