当時の社長にも耳に届いてるはずなのに、対応が遅く、厳しい処分を下したとはいえ、いまだに不信感を持っている。
 今度はその社長の妻がここにいる。
 正直あの社長の妻だしと思って期待していない。いや、しなくて正解だった。
 世間知らずにも程があるし、年齢にしては幼すぎる。まるで中学生を相手してるみたいだ。周りからなんでもやってもらって当たり前な態度が全面に出てて、仕事する姿勢が低い。このままだとここでトラブルが起きるのも時間の問題だ。
 新卒で入った時のような思いをさせたくないけど、一歩間違えれば訴えられるリスクがある。
 そんなこと恐れてまでやる必要あるのか。
「悪いけど、もう少し様子見させてくれ。明日休んでいいから。俺が代わりにやる。おばちゃん達には言っておく」
「……そうですか、わかりました」
 不承不承(ふしょうぶしょう)で福島は休憩スペースに戻る。
 野崎は額に手を当て頭をフル回転させる。
 社長のお願いとはいえ、引き受けたくないのはこちらも同じだ。
 彼女は自業自得だ。そのツケを支払う手伝いをする義理なんて本来なら必要ない。