大したことはないとはいえ、澄江はしばらく働けないことに落胆している。
 長年休まずにせっせと働いてきた澄江は、スーパーの仕事が天職だと思っている。
 若い学生のアルバイトやパート仲間と一緒に働くことで刺激になっていた。
 高校生のアルバイトの子の多くは学費や家計を助けるために働いている。中にはアルバイトをすることに関して学校と揉めた人がいる。
 学校側が家庭環境を(かんが)みた上で、最初許可したにも関わらず、数カ月後同級生による密告(チクリ)で、不公平だからやめるべきという話になった。
 澄江はその生徒の働きぶりを見ていたので、簡単に辞めさせたくないと頭を下げた。それに同じ学校の生徒がうちで働いているのに、なぜ急にやめるべきの話になるのか納得できなかった。
 ただでさえ従業員減ったらしんどい。
 ましてうちのスタッフは真面目にやってくれているから、誰1人手放したくなかった。
 学校側はまるで嫌がらせするかのように、春の台店に生徒を辞めさせるように迫った。認めなかったら、生徒を退学にさせると。
戸塚(とつか)くん本当に頼もしくなったわ。やっぱりあの時辞めさせなくって正解だった。今回悠真に連絡してくれなかったらどうなってたのやら……」
 昔のことを思い出してはにかむ澄江。
「良かったですね。お義母さん。素敵な仲間がいらっしゃって」