「社長の奥さんらしいよ」
 男性スタッフ達は結花の言動に呆れていた。
「え、そうなの?!」
 太刀川が声をあげて、店長が事務作業で使う机から取り出す。
「あれ、聞いてなかったですか? 昨日の夕方、更新されたんですよ。社長の奥さんが今日から来るって」
 男性スタッフの一人は結花の姿を見てげんなりしていた。
「あぁ、ほんとだわ。来るのは知ってたけど。いやー、ちゃんと見てなかった。ずいぶん長々と書いてるわね」
 業務ノートには結花が入ることや、働いたことがないため、言葉遣いや態度が幼いのこと、非常識なことをするかもしれないが、容赦なく注意してほしいと書かれていた。
「働いたことがないだろうね、あれ」
「だって自分のこと名前で言ってたじゃん。鳥肌たったよ。あれで40前ってな……しかも距離近かったし」
「それな。いきなり彼女の有無とか聞いてくるか?」
 男性スタッフがため息ついている中、野崎が休憩にやってきた。
 スタッフ達は「おつかれさまでーす」と挨拶するが、野崎は「おつかれ」と声が弱い。ゆっくりと男性スタッフから少し離れた場所で休憩する。
「店長顔やばいじゃん」
「そりゃ朝から依田さんの相手だからなー」
「もう燃え尽きたような感じね」