トロフィーは売ったらすぐバレそうね。
 問題集なら高く売れるかな? ついでに夫の本も売ろう。

 欲しかったブランド服売ろうとか、行きたかったエステに行こうとか、売れる前提で豪遊する内容を考える。
 どちらにしろ、最近夫の帰り遅いし、心配させるようなことを、しているんだから、罰で趣味のものを売るつもりだ。
 スマホのディスプレイに着信が鳴った。
 結花は周子にちょっと出てくると告げて、ホテルの入り口に向かった。
 春一番の風に当たりながら、折り返しの電話をする。
「……今? うちの郵便物とりに行こうとしてたとこ」
「うそ? マジで?」
 結花は舌打ちしたくなる衝動を抑えた。
 こんなことだったら、スマホの通知無視しとけば良かったと後悔する。
「……分かったわ。後でね」
 結花は電話で一気に不機嫌になった。
 あー、ついてないわね!
 夫は冷たいし! 野田が淹れたコーヒーは美味しくなかったし! ご機嫌直しに行ったランチはまあまあの味だけど、アフタヌーンティーの最中にこれ!
 本当ムカつく! あとで悪くネットに書いてやる! お母さんや野田に八つ当たりしても晴れない。
「あら? どうしたの? 結花ちゃん」
 眉間に皺寄せて、づかづかと椅子に座る。
 そんな様子でもお構いなしに周子はのんびりした口調で尋ねる。