「あなたのお母さんは浅沼さんのお父さんが歩くのに、杖が必要であることを分かった上で、隠したり、窓から投げたりね。かと言って浅沼くんは、あなたのお母さんに怒ったり、手を出すことはなかった。彼は人望があったから生徒会の副会長になったの。そういうのあるからな、あなたのお母さんは、自分より目立つことやチヤホヤされるのが男女誰であろうと気に入らなかったんだろうね」
 智景の父は生徒会引退後、結花による嫌がらせで精神的にダメージが来たのか、1ヶ月近く学校に来なかった。
「あなたのお母さんは浅沼くんを不登校に追い込んだと自慢してたけど、皆全然聞きやしなかった。むしろ軽蔑されてた。それを理解してないのか、彼女はますます悲劇のヒロインになってたよ。学校じゃむりだから、他所の学校の男子と遊び回ってたの。受験なのに。それでもって、雲雀女学院《ひばりじょがくいん》に入れたからすごいわぁ。あそこ、あなたのお母さんの実力じゃどう見ても無理なんだけどね。多分お金積んだでしょうね。本人もそう言ってたし」
 雲雀女学院はこの辺でも指折りの名門校。
 春の台中学の先輩で行ったのは毎年片手で数えられるほどで、入るのが難しい。
 中学時代優等生ポジションが最低ラインで、それ以外にボランティアとか何かで賞を取ったとか求められる。