「――相変わらずね。《《呉松結花》》さん。まあ、そんなことだろうと思ってたわ。陽鞠さんもお父さんもよく頑張って来たね」
 陽鞠は思わず涙を拭こうとティッシュを取り出す。
「あの人はね、昔っからあんな感じ。だから友達はいない。あ、世話係的な感じで従姉妹がいたね。あなたのおばあさんからずっと一緒にいるように言われて、志望校変えたっていつだったか言ってたの」
「望海おばさんですね」
「そう。でね、結花さんは自分が可愛い可愛いと日頃から言ってて、確かに男子にはモテてた。でも、彼氏を取っかえ引っ変えしてたね。なんというか、人のもの欲しがるのかな、私の彼氏や私たちのかつての担任の婚約者と揉めたの」
 あー、うちの母ならやりかねないなと想像できる自分が嫌だ。
 担任の先生の婚約者と揉めるとは……噂で聞いてたのは本当だったのか。
「待ってください、それは……」
 やばいよと言いかけるのを察したのか、赤澤は続ける。
「たとえあなたのお母さん側が担任の先生に好意持ってても、お互い同意の上でも捕まるよ。フィクションの世界では先生と生徒の恋愛関係が美しく描かれてるけど、現実はそんなに甘くない。捕まるのは先生なんだから」
「そうなんですね……お互い同意でもだめは初めて知りました。担任の先生は断らなかったんですか?」