今月に入ってから練習を始めたもので、少し前に終わったテレビドラマのテーマ曲だ。
マーチチックな出だしと駆け足感あるので、指が忙しい。繰り返し流れるメロディはこの曲を象徴する部分だ。
テンポが速い曲が少し苦手な陽鞠は、合間を縫って曲を叩き込み、昼休みに音楽室に篭って自主練していた。
しかし親のことで状況が変わり、練習どころじゃなくなった陽鞠にとって、智景からの嫌味は明らかだった。
「わ、私……です」
「ふーん、自覚出来てるじゃん。お父さんが倒れたから練習してないんでしょ? そんなの理由にならないよ。てかサボりたかったの間違いでしょ?」
「分かってて言うのならやめて! たしかに間違えたのは私。お父さんの話は関係ない!」
その瞬間、智景は陽鞠の楽譜を取り上げ、足で踏んづけた。
「ち、ちょっと何するの?!」
彼女の暴走に誰も止める気配はない。副部長の安西も部員も黙って見てるだけ。顧問の森河は今補習で不在中。
助けを求める人間がいない。
智景と陽鞠に視線が向けられ、いたたまれない空気が流れる。
大人しく言うこと聞けばいいのにと。
マーチチックな出だしと駆け足感あるので、指が忙しい。繰り返し流れるメロディはこの曲を象徴する部分だ。
テンポが速い曲が少し苦手な陽鞠は、合間を縫って曲を叩き込み、昼休みに音楽室に篭って自主練していた。
しかし親のことで状況が変わり、練習どころじゃなくなった陽鞠にとって、智景からの嫌味は明らかだった。
「わ、私……です」
「ふーん、自覚出来てるじゃん。お父さんが倒れたから練習してないんでしょ? そんなの理由にならないよ。てかサボりたかったの間違いでしょ?」
「分かってて言うのならやめて! たしかに間違えたのは私。お父さんの話は関係ない!」
その瞬間、智景は陽鞠の楽譜を取り上げ、足で踏んづけた。
「ち、ちょっと何するの?!」
彼女の暴走に誰も止める気配はない。副部長の安西も部員も黙って見てるだけ。顧問の森河は今補習で不在中。
助けを求める人間がいない。
智景と陽鞠に視線が向けられ、いたたまれない空気が流れる。
大人しく言うこと聞けばいいのにと。