女性が辞去すると陽貴はリビングのソファーで頭を抱えた。
 結局3時間近く話を聞いた。
 リビングには夜の帳が降りる準備が始まっている。
 スーツの上着を脱ぎ、電気をつけて再度リビングのソファーに持たれるような形で座る。
 
 ――義妹には弟と別れてほしい。

 正直弟と義妹の結婚は反対だった。
 初めて両家の顔合わせの時、弟がいない所で自分にベタベタスキンシップするというか、触ってくるわ、甘えた声を出すから。
 大学卒業して働かずに専業主婦を認めるのが結婚の条件だと、義妹の母親が言った。父親は止めていたが、強く言われ止められなかった。
『うちのゆいちゃん泣かせたらだれであろうと、呉松家の力使って、おたくの家業つぶすことができますのよ』と満面の笑みで言われた時は、怒りがこみ上げてきた。
 両家顔合わせの後に、家族でこの子やめたほうが……と弟を説得したが、聞き入れなかった。ぞっこんだったから。
 まるで義妹の言うことを何でも聞くと言わんばかりだった。
 すぐに別れそうだと思っていたが、なんだかんだ、今に至っている。長く続いているなと思っていたら、全て義妹の支配によって、弟と姪が犠牲になっているだけだった。我慢しているだけだった。
 弟は人が良すぎるのと、真面目なのがいいところであり、悪いところでもある。