結花はお金の管理をしているというが、支払いは全て悠真任せ。ただでさえ、裕福な育ちで小学校時代から金銭感覚がおかしく、ブランド物で身を固めて来た。未だに野菜がどれくらいかかるとか、日用品にどれくらいかかるか知らない。
 野菜が値上げしても他人事だ。他人にお金の支払いを任せている上、料理も自分でやらないから。
 
 付き合っている時は、手料理を振る舞っていたがこれは、お手伝いの野田、大野(おおの)柿本(かきもと)達が作ったのをタッパーに入れて、あたかも結花自分で作ったように振る舞っていた。
 悠真はおいしいおいしいと喜んでいた。
 その中で結花は騙されてやんのという嘲笑の気持ちと、バレたらどうしようとせめぎ合っていた。
 二人が交際している時は、悠真は結花のことを大切にしていたし、結花は大学卒業したら働きたくないが一心で、悠真に尽くしていた。
 誕生日には悠真が喜びそうな図書券や手作りの文庫本カバーを作って渡していた。文庫本カバーは今も大事に使っている。笠松(かさまつ)模様だ。
 ちなみに文庫本カバーは裁縫が得意な大野が作ったものだ。結花はラッピング用の袋に入れて渡しただけだ。
 働かないためならどんな手段とってでもやる。
 結花は中学時代から専業主婦願望があった。
 テレビでブラック企業の話題を見て、他人に使われるなんて嫌だと思った。