陽貴は身を乗り出して、ノートにメモを取る。
「嫌がらせって、具体的に何を……?」
「容姿や家のことをいじる、物を隠す、わざと大切にしているものを壊す、手紙で悪口を回す、あとは、付き合っている女子の彼氏を寝取るなど……彼氏を寝取るのは中学校からですが、他は小学校から続いていました。私は一緒にいる時間が長くて、放課後はいつも彼女の家に行って、八つ当たりの道具にされていました。さっきも、彼女の家に行って、足を踏まれました」
 女性は踏まれた側の足を靴下脱いで見せる。
 足の甲にはすこし赤みがかかっている。
 そしてすねの方に数センチのあざが見えた。
「……すみません、失礼ですが、このあざは……?」
「あぁ、これも彼女に……あれは中学生の時だったかな」
 調理実習で彼女と一緒に班になっていた女性。
 しかし彼女は調理実習では何もせず、ただ人が忙しくやっている姿を見ているだけか、男子にちょっかいをかけているだけだった。
 何もやらない彼女に先生や同じ班のメンバーが注意したが「私をなんだと思ってるの? 分かってて言ってるの?」と言って石のように動かなかった。
 女性が再度注意すると、彼女は調理実習で使っていたお湯をぶんどって、女性の足元に向けてふっかけた。