妻の本当の過去を結婚の段階で知って、1度立ち止まって考えてたら?
 言い訳するなら、当時もう20代後半で、結婚するのに丁度いいかと考えていたし、もちろん、妻のことが好きだったから、彼女の母親が反対しても、無茶苦茶な誓約書を出されても、受け入れた。
 その結果、被害者を沢山出すことになった。
 妻が今までやった因果が今巡ってきている。
 それは私と娘そして妻本人に。
「覆水盆に返らず。今出来ることと、悠真がどうしたいか考えなさい。俺は悠真と陽鞠ちゃんの両方がいい結果になってほしいと思ってる。そのためならベストを尽くす。結花さん? そんなもん知らん。あの人が自滅しようがしまいが知ったこっちゃない。ただ、あの人が不利になる形にしようと思う」
「相変わらず、手厳しいなー。はる兄」
 兄弟で1番怒らせたら怖いのは兄だ。父の次ぐらいに怖い。しかも、社員に対しても厳しいとこは厳しい。
 会社での言葉遣い、服装、マナーなど。それが高校生のアルバイトでも容赦ない。
 さすが会社で教育係やってるだけある。
「引き続きあの人の身辺調査するから。もし居場所を聞かれても、探られても無視するんだ。陽鞠ちゃんにもそう言うから。――絶対(ほだ)されるな、いいな?」
 険しい目つきで顔を近寄られ、は、はいと覇気のない声で返事した。