2人分のスリッパを用意してリビングに案内する。
 つけていたテレビを消して、音が何もなくなる。
 床に座らせるのは悪いので、ベッドの上に座ってもらう。
「何もなくてごめん」と言うと、気にしないでと兄嫁からフォローが入る。
 自分は兄の横に座った。
「結花はちゃんと改心してくれるかね……」
 ぼそっと呟いた言葉虚しく響く。
 兄夫婦は顔を下に向ける。まるで気まずいと言わんばかりに。
「……それなんだけどな、これを見てほしいんだ」
 兄は黒のビジネス鞄から分厚くなっている透明なクリアファイルを取り出した。
「これは?」
「俺が知り合いに頼んで、結花さんの過去を調べてもらった」
 クリアファイルから取り出して、パラパラとめくっていく。
 
 ――娘の担任が言っていた話は本当だった。

 過去に男性教師と関係をもって揉めたこと、そして今その男性教師が娘が通う中学校に再赴任していること。
 中学時代、妻は娘の担任と同級生で、当時担任が付き合っていた彼氏に妻がちょっかいをかけていた。他にも被害者はいる。
 中学・高校時代に同級生の子を不登校に追い込んだこと。しかも3人も。
 妻のいとこが長年妻のお世話係&召使いのような扱いをされていること。それが今も続いている。
 家事は出来ず全て他人が作ったものを出していた。