妻のヒステリックな声や悪口が全然聞こえない。
 静かに朝を迎えるのは何十年ぶりなんだろうか。
 今から横になろうとベッドに横たわるが、やっぱり長年の慣れなのか、寝れない。
 妻との生活に疲れたので、いつも隠れてカウンセリングに通っている。そこで処方される薬を飲んで十年凌いできた。その中には居眠りを止める薬もある。
 夜ねれないから日中眠くなるのを抑える。
 他に精神的な安定をはかる薬、漢方薬など。
 妻に言ったらおそらく止められるし、薬をすてられるだろう。だから妻が寝ている時に隠れて飲んでいる。
 夫が精神科のお世話になってるなんて恥ずかしいと。
 その状況にしたのは妻自身だが、全く気づいていない。
 カウンセリングの先生からは家族との生活をできるだけこまめに記録しなさいと言われた。
 その日記帳もここに持ってきた。おそらく10年分で約3冊。一冊3年間かけるタイプだ。
 本当はスマホでしたいところだが、手書きの方が信憑性が高まることからとカウンセリングの先生に言われた。
 ダンボールから中身を確認して、今使っている日記帳と筆記用具を取り出す。
 
 12月16日
 病院を退院して2日経つ。体はだいぶ疲れてたようで、朝はやく起きたけど2度寝してしまった。
 兄のお陰でのんびり過ごせる。