母がいっつも父のことを「結婚してやった」といつも言っている。
 父がどうも母に一目惚れしたらしく、何度も求婚してたらしい。
 その結婚の条件が婿養子になることだった。
 母は父に対して惚れた弱みを使って、遠回しに嫌味言ったり、見下した言動をしていた。
 呉松家が経営する会社のスタッフには、次期社長だからビシバシ鍛えて欲しいと、いびるぐらいで丁度いいと。
 父は最初スタッフから嫌がらせを受けたり、辛く当たられたりしていたが、地道な努力で今の地位がある。
 私は母を真似ただけだ。
 父を見下してもいいと思っていたから、ついつい喧嘩になってしまう。正しいことを言われてもムカつくだけだ。
 逆に兄と姉が父側につくのかよく分からない。
 私にとって味方は母だけだ。
 でもその母がもううちに来ないと言った。
 どうしよう。これから。

 結花はいいことを思いつたと言わんばかりに、スマホを開く。
「あ、もしもし? りゅうちゃん? ゆいちゃんでーす! 寂しいから今からでも会えないかな?」
 全力でぶりっ子口調でおねだりをした。
『悪い、今日は無理だ。また今度な』
 電話が切れた。
 こいつももうだめか。
 結花はため息をついて、肩を落とす。