強引にデパートの中に連れて行く結花は、目的の場所までエレベーターで六階に上がる。
 そして問答無用でフレンチレストランの店内に入った。
 ディナーを頼んだが、結花はお酒弱いアピールをしつつ、龍太郎に甘える。
「りゅーちゃんー、今度この新作バック買ってー!」
 結花がスマホで見せたのは海外ブランドの小ぶりなカバン。
 龍太郎は値段を見て目を丸くした。
「ち、ちょっと難しいかな……」
 いち、じゅう……15まんえん……!
 ぶっちゃけ、高いよー! 高い!
 無理無理むり、かたつむり!
 どこで使うんだ?! 普段使い? てかどこに売ってるの?
「えー、かって、かってー! この人ケチっ!」
 結花は机をドンドン強く叩く。
「俺を飢え死にさせる気か! 生活出来ない」
「こんなの安いじゃん。ブランド物一つ買えない男なんてなーんも価値ないよ」
 鼻で笑う結花に龍太郎は殺意が沸いた。
 この人の金銭感覚おかしいと思う。そういうとこ節々に言動や態度に出てる。
 同年代なのに、給与に対する考え方が変だ。
 アラサーで30万は当たり前なんて言ってる。いつの時代の話だ。
 今時都会の20代だって、大卒で20万届くか微妙なラインなのに。散々テレビやネットのニュースで言われている。