2人は半年前にマッチングアプリで出会った。
 結花としては暇潰しの相手が欲しいということで、既婚者であることを隠して、30前の日下部龍太郎とやり取りをしていた。本格的に会うようになったのが、2ヶ月前。
 まだ既婚者であることはバレていない……はずだとたかをくくっている。もっというと、年齢も三十八なのに、二十八と十歳程サバを読んでいる。
 会う日は娘が塾に行ってる日で尚且つ、夫の帰りが遅い日。不定期だ。
「ほら、早く出よ。美味しいもん食べて機嫌なおそ」
 龍太郎はすみませんと何度も頭を下げてゲームセンターを後にした。
 もうすぐしたら夜の帳が落ちる時間帯だ。
 さりげなく結花は龍太郎の腕を掴んで歩く。
 しめしめ赤くなってやんのと心の中でほくそ笑む。
 まだ見た目でアラサーと言っても通用する。
 私は世界一可愛いんだから。
 老けさせないようにスキンケアに対する時間とお金を夫のお金で費やしているのだから。それがこの結果だ。
 お小遣いを中学生レベルにさげてまででも得られたもの。
「ねー、りゅうちゃーん、あっちいこー」
 結花が指差したのは駅前のデパートにあるレストラン街。しかも今日のお昼従姉妹と一緒に行ったデパートだ。
「ほら、ここのフレンチレストラン美味しいのよ」